平成28年度

平成28年度の総括

事業推進責任者から

事業実行責任者 猪股裕紀洋
(熊本労災病院 院長、熊本大学小児外科・移植外科 前教授、熊本大学名誉教授)

1.全体の活動成果

 本事業3年目となる平成28年度は、最多の履修生を要して活発に研修活動が行われました。本事業開始時に履修を始められた外科履修生4名中、外国留学をされていた1名を除く3名が、他施設での実習や動物を用いたシミュレーション、ヨーロッパでのヒト肝臓を用いた摘出や分割の実習、さらに、各施設で企画した講演会での座学、学会研究会での共催企画における発表などの能動的参画を積み重ね、3年の履修期間を満了しました。また、コーディネーターも、昨年度から継続した1名を含めて3名、また病理医は、昨年履修開始の2名を含めた4名全員が、それぞれ1年コースの履修を完了できました。肝移植症例が比較的少ない、金沢大学や千葉大学でも履修修了者がでて、本プログラム全体の目的である、「肝移植担当医療人の養成による増加」は果たすことができつつあります。また、各施設持ち回りで講演会を企画されてきましたが、本年度で6施設一巡しそれぞれの施設が能動的に内容を計画する中で、当事者意識も涵養されて、医療実施レベルの均てん化に寄与しています。また、外科履修生の横のつながりは強固となり、情報交換にとどまらず、他施設などでの移植手術手技の修得における切磋琢磨が実行されています。また、ひとえに京都大学の羽賀教授のご尽力によるものですが、肝移植病理の基礎的講演会を継続して実施し、その内容はHP上で教材として整備されつつあり、これはこれまで国内では例を見なかった教材となります。また、各施設のご協力で手術ビデオも収集され、これも動画として教材になっています。このような貴重な教材を今後どう利用に結びつけるか、本プログラム終了後の活動の糧にもなりうるもので、今後検討していきたいと思います。場合によっては、協来的に公開して、全国的な専門医育成制度に利用する可能性もあります。


2.本年度の実績のまとめ

 本プログラムの教育基盤として平成28年度に大きく進展したのは、病理医養成コースの履修内容で、長崎大学に導入されたバーチャルスライドサーバーを用いて、各施設の難診断症例をこのシステムで供覧するとともに、通常のテレビ会議システムを同時に作動させて、6施設と指導施設も含めての、外科医も交えた供覧討議検討を定例的に行うことができました。これにより、病理コースの学習は格段に深化し、懸案の京大への実習参加も実現して、27年度開始以降の4名がそろって履修を修了できました。外科医は、昨年度までの実習中心の学習を継続しましたが、上記の病理検討会での外科医の積極的参加も目立ち、難症例の検討を通して、各履修生が実臨床としての経験を深め、さらに関連施設全体の医療レベル均てん化に寄与しています。また共催した学会研究会では、本プログラムの紹介や履修生による発表が行われ、履修生の研修への動機を高め、また本プログラムの専門医療人コミュニティーでの周知に有益でした。昨年度に続いて施行した、各外科医の経験度調査では、I、II期生の経験度が増す一方で、最新のIII期生の実習実績がやや伸び悩んでいて、ややプログラムのマンネリ化が懸念されますので、今後注意したいと思います。ブタを用いたシミュレーションの実施や、ヨーロッパ移植学会主催の分割肝移植研修コースへの参加などは履修生に実臨床に即役立つ内容で、活発な参加を得ました。また、外科医I期生の1名が、1年間という長期の実習を他施設で行い、執刀経験を積むなどの実質的な知識技術向上が図られて、所属大学の戦力向上に極めて有効でしたが、それを可能にした、本プログラムに基づく学長間連携での人事交流の意義も合わせて明確に示されました。


全体会議での議論

(1)  評価委員である國土先生などの意見を受けて
→ webサイトのオープンについては、移植学会、肝移植研究会などの会員番号とPWで縛って公開することを考えたいので、学会研究会の広報担当者と協議する。

(2)  長崎大学の江口教授から:Coの履修に関しては、RTCのみで、OPOのようなドナーCoは念頭にないか
→ 当初から、RTCの育成を念頭に置いていた。しかし、このプログラムが肝移植医療人養成が課題なので、ドナーコーディネーターの養成を含めることはすそ野を広げることにもなるので、必ずしも対象にならないとは言えないと思う。該当の方がいれば検討しましょう。

(3)  長崎の高槻先生から:病理検討会の教材化を考えてはどうか。
→ 現在も、一部を除いて、テレビ会議業者のサイトに、記録が残っている。ただし、これをダウンロードできない状態で、その方法を、費用を含めて検討中である。ダウンロードできれば教材化できる。また、会議録全体でなくても、使用スライドだけでも教材化できる可能性はあり、各回の芳賀教授の解釈も記録してあるので、教材になると思う。

(4)  京都大学の八木先生から:ISEMのハンズオンセミナーを、7月の金沢での消化器外科学会のときに開催予定であるのでご参加を。

(5)  京都大学の梅谷Coから:このプログラムの教材として、肝移植のガイドブックを作成した。各大学でICに使っていただけるし、またこれを用いて年度末に勉強会を予定したい。

平成28年度の個別活動実績

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