平成27年度

平成27年度の総括

評価委員会委員からの意見

 外科医コース、病理医コース、Co.コースの三つの領域でバランスよく事業が行われているように思う。特に、10人の外科医がのべ24回以上の国内移植施設での短期研修を実施していることは特筆に価する。また、来年度は、初の長期研修として新潟大学の助教のかたが熊本大学で一年間、身分がそのままに研修できるようになったことは大きな前進であり、その成果が期待できる。日本の移植のパイオニアである先人の先生方が開拓された日本の肝移植医療を若い世代に継承していくことは、私ども現役大学人世代の大きな義務であり、将来にわたって国民に質の高い移植医療を提供するために必須である。本事業が今後も順調に発展し、六大学以外の移植施設へも波及することを期待している。

①コーディネーターのネットワーク構築について
Co.同士が自由にいつでも情報交換をすることができるネットワークが構築されるとよいと考える。
②ドナーアクションも行うレシピエント移植コーディネーター(=RTC)育成
2014年度の臓器提供数は、前年より減少してしまったという現状がある。RTCとしても、臓器提供数が増えるような活動をすることが大切だと思われる。本事業の履修生は、ドナーアクションもできるようなRTCに育成される、というのが理想的ではないかと考える。

 実際に六つの大学が、「顔が見える関係」を作っていて、何かあった時に、相談ができる体制があるというのは大変良いことだと思う。また、短期間の研修だけでは経験できる症例数が不安定になりがちな中、昨年指摘のあった「長期間一施設での研修を行うこと」が次年度より実現されることは、大変よい試みであると思う。
 教育学的観点から言うと、講演・講義は最も受け身の学習であり、参加しやすくはあるが、参加型の実習と比べた際には、両者にはかなりの開きがある。その講演・講義と実習の間を埋めるのが、シミュレーションやVTRといった方法であるが、本事業の中では、外科医コースでブタを用いた手術シミュレーションを、マイクロ吻合なども含めてやっていて、しかも、屋根瓦方式に上が下に教える、という大変よい学習方法をとっている。またVTRによる学習は、教育学的にも、効率的かつ自主的な活動性も高いため、実習先は、実習に来た履修生がすぐに見られるようにVTRを準備しておく体制を作っておくとよいと思う。
 Webによる病理診断学習は、多忙な履修生にとって大変有用であると思う。病理診断教育の進め方としてWebを用いることは大変適した方法だと考える。
 コーディネーターに関しては比較的講演会が多い印象を受けた。国内のCo活動が全国で均てん化されることは、国民の目から見たら非常に大きなことだと思う。そのためにも、学ぶ内容を最初にリストアップするなど、養成の目的を当初から明確化することが必要である。
 いずれのコースも、このコースを終えるとどんなメリットがあるのか、ということを明確にしておくことが必要不可欠だと思われる。

 患者側としての意見になるが、手術手技のみならず、術後管理の問題についても研修を行っていただきたい。患者会に会員から寄せられる相談や悩みは、術後の経過に関する事と、再移植の相談が多い。ドナーをどうするかという問題も、少子化・高齢化に伴って今後将来的に出てくるかと思うが、臓器提供の推進を含めた脳死移植の啓蒙にも尽力いただければ、と思う。
 また、マスコミで移植が取り上げられることがあるが、患者側から見ると、問題のある報道も存在するようだ。透明で、信頼性のある情報提供体制を作ってほしい。
 患者側から見ると、「良い先生」というのは、必ずしも技術が高いことだけではない。いつどんなときでも安心して話のできる、信頼できる先生になっていただければ、大変ありがたいと思う。

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