平成28年度

平成28年度の総括

評価委員会委員からの意見

 本プログラムが肝移植医療人養成に関し、6大学で協力し合い、成果を挙げて来られたことに敬意を表します。
 特に、病理医コースも充実し、web検討会が毎月開催されていることはすばらしい成果だと思います。
 また、外科履修ではESOTコース派遣のみでなく、国外のhigh volume center での研修にまで裾野が広がる由、成果を期待申し上げます。

 2年ぶりに全体会議に出席させていただき、履修生の体験談をたくさん聞いて成果が上がっていると感銘を受けました。日本の肝移植症例数が限られているなかで、次の世代への技術の継承は大きな課題で、これを真剣に考えるべき時であり、その中でこの6大学のプログラムは素晴らしいと思う。
そのうえで、感じたこと、提言を述べたい。
(1)せっかくこれだけのことを税金を使ってやっているのだから、このプログラムの内容を、是非6大学外にも広げてほしい。成育、京大は入っているが、たとえば、教材コンテンツへのアクセスなど、評価委員である自分ですら、できない状態である。一般への開放ができないにしろ、移植学会の会員などでもできるようにするなど、できるだけopenにしてはどうかと思う。それによって、日本の肝移植全体を盛り上げるような位置づけにしてはどうであろう。そうすると、行政の評価ももっと高まるだろう。
(2)実習がプログラムの柱だが、もう少し積極的にやるように。また、海外での実習に力を入れ、特に韓国は、当初は日本から学んだ立場ではあるが、現在は症例数も多く、逆に学ぶ点も多いし、近いので実習に積極的に使ってはどうか。
(3)ブタを用いた実習など非常に好評で効果も高いが、同様な実習でほかのプログラムでやっていること、例えば日本移植学会主催のシミュレーションなど他の種々の教育プログラム上との協調、あるいは差別化をもっと考えてほしい。移植学会の次世代リーダー養成、JATCOの実習などもある。
(4)実習に伴う旅費が限られるとすると、国内でも、より近いところにある当初の連携指導施設ではないhigh volume centerを実習先に使う仕組みを作ってはどうか。例えば、千葉から東大など。もう少し、プログラムの連携先に広がりを持ってほしい。

 京大の医学教育推進センターを担当している立場で意見を述べる。元移植医ではあるが、現職ではないので、教育の立場でプログラムの評価をして意見を述べたい。
 教育では、active learningが大切であるが、このプログラムでは、そのskill系について実習を取り入れており、素晴らしいと感じる。講演会はとても多彩であるが、webのコンテンツを応用することを考えると財産としてありがたいと思う。また、出席できない人には、今はweb配信が容易にできるので、そのような方法も今後考えてはどうだろうか。
 手術の経験は、特に短期の実習では難しいところはあるだろうが、お互いにそれを理解しながら、実習の履修を勧めていただければと思う。
 また、このプログラムは、若い世代のつながりとしても重要であり、中に多彩なプログラムを取り入れているのも良い点と思う。
 気になるのは、修了要件は決まっているが、学習者の評価をどうしているのか、である。外科の「評価」は、「いくつやったか」というプロセスの評価が多いが、質の評価、すなわち「このひとはちゃんと手術ができるのか」というoutcomeの評価がうまくできていない。これは外科一般にいえることである。参加履修者が「どんなところができるようになったか」を明らかにしてはどうであろうか。
 病理のシステムについては、充実したなという印象を受けた。最近の、機器の改善にうまく乗ることができた、と感じる。
 コーディネーターに関しては、なかなか所属施設から出ることができないことが推測され、看護部の協力が重要であろうと思う。webのより多い活用も必要であるが、修了要件で実習参加をより強く謳って所属施設に「実習に参加しないと修了できないのだ」というpressureをかけることも必要ではないかと思う。また、コーディネーターに関しても、ゴールが不明確である点が気になる。
 全体としてはうまく進んでいると思う。チームとして、コーディネーターが外科医、病理医と別れている感じがするが、このプログラムのなかでもっとオーバーラップしていってはどうだろうか。さらに、これから、このプログラムの終了後の計画が重要になることを申し添えたい。

 慶応義塾大学の看護医療学部に所属し、以前コーディネーターであったが、今は教育の現場いる立場で意見を申し上げる。
 現在、国内では242の看護大学があるが、その学部の中で移植の講義をしているのは20校しかない、ということが日本移植再生看護学会の調査で分かっている。よって、ほとんどの看護師は、移植の教育なく現場に入ってくる。そのような中で、本プログラムは重要と思う。今、学部教育と臨床現場をつなぐ教育、Transition to Practice (TTP)ということが重要とされる。このプログラムはそのような意味を持つものと考える。
 三点申し述べたい。
(1) コーディネーター(Co)のリクルートについて:Co履修生の募集が難航すると聞いた。現在、看保連では、診療報酬で、現在の術後だけでなく、移植術前評価についての管理料算定を要望している。これがとれるようになると、資格の取得を算定要件にすれば、何らかの教育履修、このようなプログラムの修了などを含めるようになれば、看護師のポストや雇用条件上有利になって、履修生の募集にも有利に働くのではないかと思う。この点で、収載にむけて医師たちの協力もお願いしたい。
(2) Coももう少し海外へ出る機会を増やして、海外のspicyな情報を感じてはどうか。実際に出るのが難しければ、ネットのサイトを見るだけでも良い。今は、移植コーディネーター関連のサイトで、アメリカではNATCO、ヨーロッパではETCOがある。NATCOのサイトでは、Coトレーニングコース修練後の評価をどうするか、というCoの評価の方法も出ている。そのようなものを参考にしつつ、本プログラムで、履修生が何ができるようになったか、を評価するのもいいのではないか。また、International Transplant Nurses Society (ITNS)のサイトで、テキストも購入できる。このようなCo用の教材は少ないが、1万円弱のものもあるので、もし勉強会が慢性化した感があるなら、購入してみんなで英語の本を読むような機会を作ってはどうだろうか。また、Mayo Clinic, Pittsburgなどともコネクションはあるので、研修などでもっときればと反省している。海外へCoが出ていきたいと思うときには、語学が必要ではあるがサポートしたい。また、語学に不安があってもまず海外の学会参加でもいいと思う。海外の教育コースもあり、6月にNATCOのフロリダ、また、ITNSのアリゾナのコースもある。
(3) Coの熱意、士気を高めることが必要である。このプログラムによるネットワークの構築は、医師同様、Coにも、共同意識を高めて士気を高めるのに有用と思う。その点で、他施設に行くことも重要と思う。また自分の経験も、外科医の豚の実習にCoも参加してみるのも、実際にすごく勉強にもなるし、医師との温度差を近づけることに役立つ。
余談であるが、移植患者を新潟のスキーに連れ行くことを医師たちとも共同でやっている。長期フォローの一環としてやっているが、長期ケアのことを考えたり、そのような場で長期プログラム作ることもいのではないかと考えているので、近くの方は参加してほしい。

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