平成29年度の総括
評価委員会委員からの意見
・ 今年度の肝移植研究会担当であるので、演題と共催の協力に御礼申し上げる。
・ 履修生の感動が伝わってきた。特に、「内外の同世代との交流」「ブタ実習の参加が有意義」「病理のwebカンファが実際の臨床にも有益」との感想を聞いて、本プログラムの意義を再認識している。
・ 長期のhigh volume centerでの研修を希望している若い外科医がいると思うが、その対応が十分できていない。
・ 参加の6施設間で、症例数に差があるために、履修生によって、その経験度にかなりの差が出ている。今後は、もし、この事業のような研修制度を全国展開するようなことを考えるならば、各施設の症例数に応じた、あるいは履修生の経験度に応じた、履修の内容や目標、カリキュラム設定なども検討すべきではないか。
・ 肝移植が、フロンティアから標準治療に移行する時代になっており、若い人たちに、日常診療でのつらさにもめげない、アカデミックなドライブも与えることを考えるべきではないか。終了後を見据えてのそのような工夫も一つのアイデアと思う。
・ 4年目を迎えて、いろんなことが上手く回り出したなという印象を持つ。
・ 実習が未だに時間が取れずに十分行けていないというのは、毎年のことで、やはりこの辺をどうするかは継続的課題である。
・ このプログラムのアウトカムをどこに置くか、を考えるべきである。
・ 年間予算の減少をどうするか
・ 6年目以降をどうするかは大きな問題である。
・ 國土委員と同様、high volume centerでの経験を積む必要性を感じている。
・ 教育の順番として、know,how,show and doesがあるが、このプログラムの内容としては、howあたりでとどまっていて、それ以上に実を深めようとすると、実際に別のhigh volume centerでの実動経験が必要になると思う。それを今後、カリキュラムにどう包含するかが問題となる
・ 上記をうけて、これからの課題として、このプログラムでの成果を、社会や学会がどう認めていくのか、という実質的なものをつくっていかないと次に続かない。この履修終了がどういうクレジットになるのか。本プログラムのプロセスの保証はできているので、今後患者の目からみて、アウトカムがどう保証されるのか、言い換えると、このプログラムを経たら、6大学でどういう肝移植医療が展開されるのか、を明らかに示していく必要がある。
・ 評価委員ではあるが、今年度は、二点、コーディネーターの育成へ直接関与させていただいた。一点目は、今年のアジア移植学会で、清水コーディネーターの紹介にもあったように、学会に参加して、このプログラムを紹介するとともに、国外の移植事情をコーディネーターが生で知る貴重な経験を共有できた。そのような経験が、清水コーディネーターの今後の「士気」につながれば良いと考える。
・ 一方で、海外へ行くのに、時間が取れないという体制が残念である。今後、同様な機会があれば、移植医たちも、コーディネーターを海外学会へ誘っていただけるようにお願いしたい。
・ 関東でやっている「肝移植フォーラム」に清水さんに、この研修プログラムに参加していただいて発表していただいた。その際の他の参加者の評価として、今後の医療人養成において、狭い専門分野である肝移植のコーディネーター領域で、経験者が近くにいてそのノウハウを容易に吸収できる本プログラムはすばらしい企画だ、ということを言われた。そのようなプログラムを発表していただいたことを感謝された。
・ 来年は、自分が研修を受けたピッツバーグでの施設研修に案内できればいいなと考えている。旅費滞在日だけで費用はそんなにかからない。
・ 250以上の看護学部があるが、妥当な教科書がないので、19しか移植医療の授業がない。ほとんどの看護師が、移植について知らないまま看護師になっているのが現状で有り、今後、妥当な教材の作成について考慮いただけるとありがたい。
・ 今年から、造血細胞移植で、移植前のコーディネーター業務に診療報酬が衝くようになった。今後肝移植でも同様な動きがあることを期待している。
・ 患者の立場からいくつか感想を述べたい。
・ 自分が会長をしている、「胆道閉鎖症の子どもを守る会」には1000人程度の会員がいるが、4割が肝臓移植になっている。その面からは肝臓移植医に感謝したい。その上で、自分たちの問題を申し上げると、葛西術と肝移植で長期生存が得られるようになって、成人が増えてきた。その点で、もし再移植や長じての肝移植が必要になった場合、ドナーの可能性から、生体より、脳死肝移植への依存度がより高くなっている。よって、脳死移植の推進を何とかしてほしい、というのが切実な希望である。提供側の負担が問題になっているということを聞いている。提供施設にインセンティブを高める施策が必要なのではないかと思う。自分たちも市民運動として、継続しているが、このような課題は行政としても是非解決に向けてやっていただきたいと思う。
・ オランダで、提供や移植が標準化されている報告があったが、日本では、まだ「流儀が違う」、みたいな事があるようだが、標準化をして、6大学からさらに国内に広げ、ネットワークを作って負担軽減につなげ、ドナーが増える仕組みを考えてほしい。本プログラム終了後、是非ネットワークの広がりにつながるようなことを考えてほしい。
講評に対する事業責任者のコメント
・ 貴重なご意見を感謝申し上げる。
・ 施設間の症例差による履修生の経験の差が問題になっていることは認識している。
・ 終了後、学会研究会などとタイアップして、広げた組織で展開したいとは思っている。
・ 本日交付する履修修了証がどう評価されるのか、は難しいところがあるが、日本国の文科省が採択した公的なプログラムを終えた証拠としては、履歴書にも記載し、その証拠として使っていただく事は可能である。
・ 本日のコメントを生かして、教科書作成など具体的な提案もいただきましたので、何か「形」を残すようにご相談して進めていきたい。