令和2年度

令和2年度の総括

評価委員会委員からの意見

兼松隆之先生

令和2年度の活動についての評価
 すべての社会活動がコロナウイルスの蔓延のため、制限される年でした。
ほとんどの学会活動がwebでの開催となりました。SNUL-LTの活動も制約を受けざるを得ない社会情勢でしたが、web病理検討会は2回開催され、ブタを用いた肝移植にまつわる実験も遂行され、研究と教育面での活動がコロナ禍にもかかわらず、顕著でした。
 肝移植関連の研究会や学会と積極的にコラボレートした試みは若手医師のモチベーションを高めることに寄与したものと評価します。
7カ年を通しての評価
 旧六医科系大学が集まって共同で人材を育成するための目的が、肝移植というテーマのもと、花開いたと感じている。病理検討会の本格的な実践、大学間での相互手術体験、ブタを用いた手技の修練など、異なった施設が協力してできた仕事も多々見受けられます。
 当初は6大学の連携の形が見えにくいことを懸念いたしましたが、次第に連携がとれるようになり、プロジェクトの意義が見えるような形となったと思います。
その他
 7年間のプロジェクトをやり通されたと、プロジェクトリーダー猪股先生に敬意を表します。猪股先生はプロジェクト半ばで熊本大学を定年ご退任になりました。大学教授の立場を離れると、他施設共同作業を束ねることは難しい業務になるのではないかと私は懸念していました。しかし、先生ならびにプロジェクトを担う会員の方々は今までになかったような枠組みで肝移植に関する教育と研究に新しい分野を切り開いてこられました。
 加えて、熊本大学小児外科・移植外科ならびに熊本労災病院の関係の皆様も今回のプロジェクトにご理解とご支援を賜ったことに、このプロジェクトの末席にいたものとして御礼を申し上げます。

國土典宏先生

令和2年度の活動についての評価
 新型コロナ禍で厳しい状況の中、最低限の活動を維持され、履修を完遂されたことに敬意を表します。雑誌「移植」の特集は不肖私が編集委員として提案させていただいた企画ですが、このような素晴らしい論文集・業績となり、大変嬉しく思います。
7カ年を通しての評価
 移植医療の次世代への継承の必要性を痛切に感じて猪股先生はこの素晴らしいプロジェクトを始められたのだと理解します。先生のリーダーシップで文科省支援期間を過ぎても継続され、最後の履修生を送り出されたことに改めて敬意を表します。猪股先生と同じ世代の者として、移植技術だけでなく移植医の「心」も継承されたと信じています。また、この事業が学会の事業として継続される道筋が出来たことも素晴らしい成果であると思います。
その他
 猪股先生、関係者の皆様、本当にお疲れ様でした。評価委員を勤めさせていただき大変光栄でした。ありがとうございました。

小西靖彦先生

令和2年度の活動についての評価
  • このプログラムに限ったことではないが、COVID-19により十分な活動ができなかったことが残念であった。
  • そのなかでもブタを用いたハンズオン実習が行われた
  • Webを利用しての学修を保とうとしたことは評価できる
7カ年を通しての評価
  • 6大学で移植に関わる人材育成を継続的に続けたことに強い敬意を表する
  • 外科医のコースは、理論と実践の二面から練られた学修構造であった
    • 実践面の学修は各々距離がある6大学間でのプログラムであったため、自施設の勤務を続けながら実際の移植手術に参加することには困難さを伴うものとなった
    • このためブタでの移植経験が多くの参加者にとって最大の学修機会となった
    • 一定の時間がとれる環境を確保して、ハイボリュームセンターで国内留学の形をとれた場合にはより学修が深まっている印象があった
  • 病理の人材育成(病理コース)は、学修内容が遠隔でも実施しやすく(テレパソロジー)またコロナ禍でも成立しやすいこともあり、順調な成果をもたらしたと考えられる
  • コーディネーターコースは精力的に運営された一方、各大学病院でコーディネーターの位置づけが明確でないことが多かった様子がみられ、コースが発展することの阻害要因のひとつとなったように思われる
その他
  • このプログラムが7年にわたって肝移植に関わる人材を育成したことは、我が国の今後の肝移植医療にとって大きなアドバンテージになる
  • 本事業は日本移植学会や日本肝移植学会に引き継がれていく可能性がある
  • 我が国の肝移植(脳死、生体)のボリュームが今後どのように推移していくかの予想に基づき、術者・病理医・コーディネーターなど育成すべき数がある程度想定されると思われる。それを基盤として、国レベルで移植に関わる人材の育成計画をたてる際に今回のSNUC-LTでの経験は大きな財産となる
  • 6大学の枠にとどまらない人材育成の途を示すことを、次のステップとしていただきたい

添田英津子先生

令和2年度の活動についての評価
 これまでの活動を論文化し、成果をまとめられたことは本来の目標達成に至る、と評価してよろしいのではないかと存じます。
7カ年を通しての評価
 7年間を通して、医師には海外渡航の機会が多く、看護職にはそのチャンスが少のうございました。一度CASTに参りましたが、お休みをとることのむずかしさを痛感致しました。雇用体制については今後も大きな課題と思いました。
その他
 改めて論文を拝読し、プログラムの申請時に、雇用人件費も含めていただいたことを認識いたしました。猪股先生はじめ本プログラムに携わって下さった先生方が、移植コーディネーターの育成にお心を折って下さっていたことに、心より感謝申し上げます。SNUC-LTはひと区切りとなりますが、この領域がさらに熟成し発展していくことをお祈り申し上げます。

竹内公一先生

令和2年度の活動についての評価
 コロナ禍で移動制限がかかるなど難しい環境下で活動を継続されたご努力に敬服いたします。活動の医学的内容で評価する立場にありませんが、2人の履修生が終了されたことは成果として評価されることだと思います。
7カ年を通しての評価
 全国どこにおいても格差のない質の高い医療の提供を望む患者家族の立場からは、高度な移植技術をもつ医療者の育成が病院や施設の壁を越えて行われてきたことは大変意義深いことだと思います。今後は、この研修を更に進化発展させ移植医認定制度のような全国的なシステムとして確立することを望みます。
 そうすることによって、移植医療が一般の医療のように患者は全国どこにおいても安心して移植を受けられるようになることを期待したいと思います。
その他
 移植医療技術の進化のためには、移植医療の普及啓発が不可欠であると思います。改正臓器移植法は成立してからの臓器提供は増加していますが、思ったほど伸びていません。患者団体も努力してまいりますが、移植学会におかれても、移植医療の普及啓発に力を入れていただけたらと思います。
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